2011年10月12日 of GAIPRO.NEWS

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PCで操る時代?低価格HDスイッチャーその実力を探る

2011.10.12

ATEM TV

 最近、高機能な映像機材を驚くほどリーズナブルな価格で次々投入しているBlackmagicdesign社。その中でも何かと話題のATEMスイッチャーシリーズ。先日もFacebookにてご報告しましたが、弊社でも先日 ATEM Television Studioを購入しました。このスイッチャーは上位機種 1M/Eの機能を踏襲しつつ、さらにコンパクト(1Uサイズ)で低価格を実現したHDスイッチャーです。スイッチャーという名前は知っていても、使用用途はLIVEなど限定的であるので普段の映像制作において縁のない方も多いと思います。最近ではVJなどの登場でスイッチャーの需要も飛躍的に増えたと思います。そこに来てUstreamの台頭です。Ustreamは配信ソフト内で映像をスイッチングすることは可能ですが、それなりの配信をしようとすると、かならず外部スイッチャーが必要になってきます。まして業務用HDカメラ数台で配信するなら必須です。そういう意味ではいままで比較的ハイエンドの現場で使用されてきた高機能スイッチャー需要も大分敷居が低くなってきたと言えます。今後、映像用のスイッチャーはさらに需要を伸ばしていくものと思います。ゴタクはこの辺で止めておいて、さっそくATEM Television Studioの使用感・インプレッションをご紹介したいと思います。

入力はHDMIとSDI、計6系統

ATEMHDMI4 SDI4、入力自体は8系統あるが実際使えるのは6系統通常、業務用のHDインターフェイスといえばSDIですが、Ustreamなどの家庭用カメラの用途も意識してかHDMIも4系統備えています。SDIも4系統の入力で、うち2系統はHDMIかSDIかを選択する必要があり、合計では6系統の入力ということになります。入力の選択は後述するソフトウェアの「Setting」タブで行えます。ソースが6つも入力できる時点で弊社の用途には十分です。ただしHDMIの場合、3m以上になるとケーブルによっては認識されず注意が必要です。通常で認識されていた長めのケーブルでもATEM Television StudioではNGということが多いです。カメラから実機への距離が遠い場合は、やはりSDI接続ということになります。HDMIはコンバーターでSDIに変換するのは必須でしょう。AES/EBU音声入力はBNCの同軸ケーブル(AES/EBU. )のみ音声は残念ながらアナログ入力は無く、現時点ではカメラからのエンベットオーディオも扱えません。デジタル入力(AES/EBU. Unbalanced via BNC connector)のみですので、最終出力に音声をエンベッドする場合は、ここから音を入れるしかありません。なんらかのDAC等の機器を間にはさんで音声を入力することになりそうです。Ust用途の場合は映像のみをSDIでPC入力して音声はUSBでPCに入力、という場合が多いので、特に問題ないかもしれませんが、ATEM Television StudioにはH264ハードウェアエンコーダを搭載しており、USB経由でPCにリアルタイムキャプチャできますので、音声入力の仕様はちょっと残念です。今後のファームウェアで任意カメラからのエンベッドオーディーをスイッチングに関係なく活かせる仕様にしてほしいものです。


マルチビューマルチビューは様々な場面で利用価値が見込める出力には最終出力(プログラムビュー)の他、マルチビューがあるため、ここですべてのソースと最終的なOUTを確認できます。確認用モニターが一つで済むのは助かりますし、値段からして、この時点でお買い得感があります。弊社の購入の決め手はここでした。これはスイッチャー以外に様々な用途が考えられます。たとえば単純に現場での複数カメラのモニターを1つのモニターで済ませたい場合には役に立つ事でしょう。同じモニター上で複数のソースを見れれば、互いの色味などを見るのにも便利です。違うカメラ同士の画調合わせの追い込みにも役に立つと思います。(WIPEで比較するなど)ATEM Television Studioには音声の出力は残念ながらありません。ですので音声をスイッチャー内部でも活かすのであれば、デジタル音声(AES/EBU. )入力→映像にエンベッドされた音声出力、ということになります。そういう意味では単純なスイッチング機器と割り切ったほうがいいでしょう。


SW操作はPCでのソフトウェアコントロール

EOS 5Dソフトウェアコントロールのショートカットは限定的圧倒的に低価格のATEM、そのコストダウンの理由の一つにPCでのソフトウェアコントロールがあります。いくつものボタンやトリガーをPCソフト上でコントロールすることで、SW自体の裸体もかなりコンパクトになっています。本機とPCはLANで接続しますが、PCは最初に固定のIPを割り当てる必要があります。最初、マニュアルも見ないで、とりあえずLANを繋げばコントロールが可能になると思ってしまい、ソフトを立ち上げてもなんら反応なかったことに焦りました。ちゃんとマニュアルは読むものです(英語です)実際の操作は、カメラソースの選択とトリガーの操作に関してはキーボードショートカットが使えますが、その他の細かな操作に関してはマウスでクリックするしかなく、ここは改善してもらいたい部分です。(キーボードショートカットの割当をカスタマイズできるようにしてほしい)MacBookAirMacBookAir11.3でも快適に操作できるまた、ソフトウェアのコントロールウインドウは固定のため、各タブを広げた時にはスクロールしなければなりません。ウインドウのリサイズもあればとても便利だったのですが、ちょっと残念です。当方はMacBookAir11.3でのコントロールを想定していましたが、ギリギリ、ジャストサイズでした。通常はテンキーでソース選択、リターンキーでMIXやワイプ、スペースキーでカットチェンジという操作になるでしょう。単純なスイッチングであれば十分な操作性です。放送局レベルの細かい操作は、やはりハードウェアコントローラーが必要でしょうが、そこまでの操作性をATEM Television Studioに求めるものでもないと思います(ハードウェアコントローラーはATEM Television Studioが6〜7台くらい買えてしまう値段ですので)


ロゴなどのスーパーインポーズも可能

画面アップストリームからのキー処理済みの映像とロゴの2系統を重ねるさて、実際のATEM Television Studioの機能ですが、1M/Eから比べると限定的とはいえ、それでもかなり高機能です。通常のMIXやWIPEはもちろんのこと、アップストリームキーで、クロマキーなどのキー処理も出来ます。精度は残念ながらAfterEffectsで追い込んだ時のような精度ではないですが、そこそこ抜けました。エッジは若干残りぎみです。スピル除去ができればいいですが、そこまでの高機能さは無いようです。簡易的にバーチャルセットなどに合わせる用途には向いているのでしょう。ダウンストリームキーは2系統あり、ここでロゴなどを合成できます。(2系統あるので2枚は重ねられる)キーイングした素材のスーパーインポーズも可能です。1M/Eでは静止画像32枚、クリップ2個の登録が可能でしたが、残念なことにATEM Television Studioは静止画像が2枚のみの登録しかできません。この部分は本機搭載のメモリ領域によるものですので、今後のファームでの改善は出来ないことになります。ただし、1M/EもTelevision Studioも電源を落とした時点ですべてのメモリがリセットされますので、その都度PCから転送する程度のシンプルさは逆にいいかもしれません。登録はコントロールウインドウ下のタブにて「media」に切り替え、必要な静止画像をこのメディアプールに呼び込みます。アルファチャンネル付きTIFFなどでロゴ等を作成し登録すれば、ダウンストリームキーからスーパーインポーズできます。スーパーのキーイングの具合もダウンストリームダブにて詳細に調整することが可能です。


画面Photoshopから直接転送した画像はアルファが付かない?一つの目玉機能として、PhotoshopからのATEM Television Studioへの直接書き込みも出来ます。ただしこの方法だと現時点では何故かアルファが埋め込まれずスーパーとしては使えないようです。フリップやタイトルなどスーパーインポーズ以外の素材出しをするには向いていますが、これも今後のアップデートで是非改善してほしいです。筆者はAfterEffectsでスーパーを作り、TIFF書き出し、メディアプールに転送、という方法がしっくりきました。AEは書き出した時点で透明部分はすべてアルファが埋め込まれるので便利です。筆者がPhotoshopでの制作よりAEでの制作に馴れてしまっているのもあります。さきほども書いたとおり、ATEM Television Studioはクリップ(動画)の登録はできません。ですので、ムービングロゴのスーパーインポーズはメディアプールからは無理です。荒技で考えたのは、アップストリームのキーイング機能を使ったスーパーインポーズです。あらかじめ単色背景のムービングロゴをAEなどで作成して、それをなんらかの形でループで映像として入力すれば、そのソースをキーイングしたものをスーパー出来ると思います。試していないのでなんともですが‥。

これらの操作は最終出力に乗せる前に、すべてプレビューウインドウで効果を確認できます。例えば、実際にどんな感じでスーパーが乗ってくるか、どのようにワイプさせるか、はたまたキーイングの具合はどうか、ということをOnAir中でもプレビューウインドウにてリハーサルしてから実際の出力に乗せる事が可能です。最後に、DVEはATEM Television Studioでは省かれています。ですので、PinPなどの基本的なことが出来ないのはちょっと残念です。とはいえ値段にしてここまでの機能、筆者としては「アッパレ!」です。

H264ハードウェアエンコード

画面付属の「MediaExpress」でUSBからのH264映像をキャプチャできる
ATEM Television Studioは、もう一つの目玉機能としてH264ハードウェアエンコーダ内蔵というものがあります。Ustチームには若干期待された、H264のUSB出力ですが、残念ながら凡庸の配信ソフトには認識されない模様です。しかも、キャプチャは2秒ほどのディレイがあります。前述通りATEM Television Studioはデジタル音声の入力のみですので、ここに音声を入力しないと最終のUSB出力にはオーディオがエンベッドされません。たしかにUstreamに使えなかったとしても、PCで気楽にプログラムストリームからの映像を記録しておけるのは用途によっては便利です。それだけに音声の入力問題は残念です。キャプチャは実機とPCをUSBにて接続して、一緒にインストールされた「MediaExpress」というソフトで行います。さて、実際はというと、さすがはハードウェアエンコーダーで、MacBookAirなどの非力なPCでもサクっとキャプチャできました。画面収録画質はカスタマイスが可能ただ時折終了時が安定しなく(強制終了のメッセージなどが出たり)ちょっと怪しい動きをします(汗)キャプチャされた素材は問題なく再生できています。画質などは任意でのビットレートを操作できる他に、YouTube、AppleTV、iPod/iPhoneなどのプリセットもあります。例えば、とある社内イベントを数台のカメラでスイッチングしH264収録、iPadなどの端末で即座に社内共有する、なんて用途にはもってこいです。実際に弊社もこのような用途をお取引先様に提案しようと思っています。ちなみに余談ですが、MacBookAir11.3でスイッチングコントロールしながら映像キャプチャ、ということも何の問題なくできました。ただし余裕あるならコントロールとキャプチャは別のPCで行ったほうが安全かもしれません。

画面何故かH264収録に限り乗せたスーパーが汚くなる一つ気になったのは、ダウンストリームでスーパーインポーズした静止画はインターレースのせいか、かなり汚いです。(解像度が間引かれエッジがガタつく)SDIやHDMIの最終出力は奇麗に出力されていたので、USB経由でのキャプチャの固有の問題かと思われます。これは改善されるのか、うーん微妙です。出力をプログレ変換する際の問題かと思います。


AZDEN CAM-3II

 実機は使っているうちに結構熱くなります。終了時すぐに触ると、ヘタしたらやけどするかもしれません。夏場でのヘビーな運用には注意が必要かもしれません。別途ファンを取り付ける等したほうがよいでしょう。あとは実機が1Uというコンパクトサイズですが、かなり薄いため現場での運用はみなさんどうなさるのかなと気になっています。裸で運用します?弊社ではワイヤレスシステム用の比較的奥行きのない1Uラックマウントケースをアマゾンで購入してハメてみました。詳細はFacebookでレビューしています。

まだ実際現場に出して運用していないので、どこまで働いてくれるかは未知です。もともと弊社では1台のモニタで複数の映像ソースが見れるマルチビュー環境が必要で、それだけのために購入しました。しかしこうまで高機能であると実際の現場でHDスイッチングしたい欲が出てくるものです。弊社取引先様には社内イベント等でLIVE出しする案件が稀にあります。そういう現場に今後は積極的に提案させていただき、HDでの高品質スイッチングを提供できればと思っています。Blackmagicdesign社のドキドキするような製品の発表、今後も期待したいです。

PS.Ustでの用途ですが、同じくBlackmagicdesign社から発売されているUltraStudio 3DのThunderbolt™入力が凡庸の配信ソフトに対応しているとSystem5さんのFacebookにてレビューがありましたので、ATEM Television Studio + UltraStudio 3D + MacBookAir なんて組み合わせはいかがでしょうか?けっこうコンパクトで高品質な配信が可能かと思います。今後発売される予定のIntensity ExtremeもThunderbolt™入力ですので、同じことが可能かもしれません。

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