2013年3月5日 of GAIPRO.NEWS

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Z5Jユーザーから見たGY-HM600/650 -後編-

2013.3.5

P1040786.JPG 前編からかなり時間が経ってしまいましたが、再度GY-HM650のデモを借りる事が出来たので、前回検証できなかった部分含め、しっかりレポートしたいと思います。特に前回は「拡張モード」を試していませんでした。実は「標準モード」の状態でZ5Jとの明るさ比較検証なんぞしておりましたところ「あれ?そこまで明るくなってないぞ」と思っていました。しかし拡張モードにした途端、ガンと明るく!?(汗 これが本来のHM600/650の明るさだったと後で知りました。今回は、その「拡張モード」との比較はもちろん、音声周りや、収録後のワークフロー、その他細かい部分も若干掘り下げてレポートしてみたいと思います。

前回のレンズ周りに関しての補足事項

HM650ファームで進化するHM600/650まずレンズ操作に関しての補足から。気になるAFの精度ですが、前回のファームはベータ版だったので確実な評価が難しかったのですが、今回の最新のファーム(V0102)で、かなり改善されていることを実感しました。ワブリングがとても少なくなったのと、想定される用途でのAFの精度も確実性を増しています。前回ではボケてしまった場面もしっかりAFしてくれています。人を撮影する事に限れば顔認識によるAFは結構使えました。筆者は通常のAFと顔検出AFをすぐに切り替えできるように、USER3ボタンに「顔検出」を割り当てました。この2つのAFをうまく併用することで、ほぼ実用レベルのAFになったと思います。ただ何度もいいますが、AFはあくまでAFです。Z5Jでも言える事ですが、外す時は外しますので、要は使いどころかと思っています。HM650はMFがとても気持ちよく使いやすいので、筆者が今後HM650でAFを使う場面は限定的、という結論は変わりません。(Z5J時代も、AF使う場面は、比較的重要度低い際に使っていた程度でした)
 一方で、前回の運用時には気付かなかった微細な事項ですが、Z5Jと比較すると、マニュアル時のアイリスリングの動作はステップしているように感じます。普段はまったく気付かないレベルですが、ほんの微妙にパラつきます。これは若干惜しい部分です。ただ実際の現場で、そこまで気になるレベルでは無かったのと、実際、どれほど微妙にアイリス調整する場面があるのか?という事を考えると、弊社としては実用レベルではないかと判断しました。敢えて言えば、舞台撮影などで微妙にアイリスを変化させていく場面で気になってくるかもしれませんが、舞台の場合はフルタイムマニュアルでアイリスを操作するより、アイリスをオートにしてAEシフトで調整したほうが得策と感じました。HM650のAEシフトは録画中でもサイドの十字ボタン(左-右)で簡単に変更できますし、AEシフトを変更した場合は、明るさは滑らかに変化するようです。むしろバンバン明かりが変わる舞台だとアイリスは基本オートにしておきたいので、AEシフトとの組み合わせがベストかもしれません。欲を言えば、アイリスリングを回すとAEシフトが変化、なんてモードを選択できたら、弊社の用途としてはすごく便利なんですが‥。アイリスリングでAEシフトこそ、ハンドヘルドカメラといったジャンルにはズドンとハマるのでは、なんて夢想してしまいます。オート時のマニュアル、つまりオートとマニュアルのハイブリッド的な使い方ということになります。これは発展するとAFにも言える事になります。つまりAF使ってて見当違いの部分にピントが合った場合、ピントリングを回して任意の部分にピントを合わす事ができる、そしてそのままその部分のピントをキープする、つまりAEシフトならぬAFシフトです。いやいや、ここら辺で止めておきましょう(笑)(Z5JはAF中もピントをマニュアルで変更できましたが、結局合わせても元のピントに戻ってしまいますね)


ピーキングが前提の液晶モニター

HM650ピーキングの設定はメニューからでなく、コンパネのボタンで操作できるZ5Jユーザーとしては、最初、HM600/650の液晶の見え方には違和感を覚えるかもしれません。これはデフォルトでピーキングが入っているためで、液晶が収納される、ハンドル先のコンパネ(音系の調整が集まっている部分)の「PEAKING」ボタンで細かく調整出来ます。最初それを知らないまま液晶モニターを覗いたので「なんだかギラついて見づらい液晶だなぁ。好みじゃないな」と感じてしまったのですが、このピーキング調整ボタンで -4~ -5 くらいに設定したら馴染みある感じになりました。これ知らないとおそらくZ5Jユーザーは「見にくい液晶だ」と思ってしまうでしょう。HM700/750時代からJVCのカメラを使っている知り合いに聞いたところ、ピーキングをMaxで使っているらしく、ギラギラ液晶でピン山をつかんでいるとのことです。最初はギラついて嫌だなと思っていたビデオエッジ強調によるピーキングでも、馴れればピントの山がつかみやすくなるかもしれません。(余談ですが、筆者はPanasonic製のHVXシリーズなどにあるEVF DTL(画面映像の輪郭強調)は好きではなかったので、ほとんど使っていませんでしたが、そもそもHVX200シリーズの液晶が見づらい上に、余計見づらくなる、というのもありました。)気になったのは、「再生モード」にした途端、ピーキングが強制的に最低になり、液晶の精細感が一気に失われた感じになる事です。これは仕様かと思いますが、再生モード時に切り替えた際でも現在のピーキングの状態をキープしていただいたほうが違和感が少なくなるだろうなと思いました。(もしかしたらピーキングとシャープネスは別に設定があるのかもしれません。これは未検証です)
 液晶のバックライトですが、Z5Jの液晶に比べて若干暗めの印象もありました。ただ、立ち上がり直後が暗いのかもしれません。ブライトネスを+1にすると、Z5Jとほぼ同じくらいの明るさに揃う気もします。Z5J同様、バックライトの強/弱は選べるので、屋内、屋外の撮影に合わせて、バックライトの強さを調節するのが良いでしょう。このメニューもお気に入りメニューに入れておくと、場面に合わせて一発呼び出しできるので便利です。
 ただし、バックライトを強くしても、やはり晴天時の屋外では厳しいものがあります。もちろん背面のビューファインダーを使えばいいのですが(Z5Jと比較するとビューファインダーはかなり高精細)、液晶モニターで見たい人は液晶フードは必須ですね。Z5J(NX5J)は装着したままで液晶を収納できるといった便利な専用フードがありました。HM600/650に関しては今の所専用フードは無いので、弊社ではFOODMANの4inchタイプのものを使いました。HM600/650にも装着に便利な専用液晶フードが販売される事を期待したいです。


より詳細な調整が可能な音周り

HM650全て一カ所にまとまった音声周りの操作 音周りを見てみると、音に関する設定は、すべて液晶が収納される部分のコンパネに集まっています。この手のカメラの多くは、ライン/マイクの切り替えのみ、XLR入力の近くにあり、Z5Jにいたっては、+48もスイッチもXLR入力の部分にあります。通常の操作を考えると、XLR端子にキャノンを繋げた時点で、マイク入力なのかライン入力なのか、はたまたファンタムが必要なのか切り変えたくなる部分なので、そういう意味でXLR入力付近に設定があるのかなと思われますが、ここは好みが分かれる気がします。一つのコンパネにすべて集まっていたほうが、操作性が上がるという場面もあるかもしれません。
HM650ピントリングに若干近接しているが、実際はそれほど問題にならなかった 次に気になるのが音声レベルのツマミ位置や操作性です。HM650を最初に触った時、ツマミの位置が微妙だなと思っていました。レンズのフォーカスリングと近接しているため、撮影中ツマミを回したら、うっかりレンズに手が触れてしまうのでは、という不安がよぎりました。(ワンマンオペレーションでは、途中で音声レベルを変更する場面は結構あります。)そういう意味ではZ5Jの音声レベルツマミは良く出来ていました。誤動作防止のためのカバーも良かったです。HM650はツマミのフィーリングはとても良く、回しずらいという事は無かったので、実際のオペレーションではそれほど問題はありませんでした。しかしながら、誤動作防止のためのカバーなど、一工夫あったらもっと良かったと思います。
HM650リミッターはZ5Jに比べて細かい設定項目が存在する 弊社が最も気になっていたのは、XLRマニュアル入力時のリミッター効果です。音入力に関して、音声スタッフを呼ぶ事ができなかった際、ワンマンオペではリミッター機能は重要になってきます。Z5Jはリミッターのオン/オフしか無かったのに対し、HM600/650はリミッターの設定が細かい部分まで出来るようになっています。まず、入力する基準値(-12db、-18db、-20dbから選択可能)を定め、その基準値に対して、どのあたりでリミットさせるかを定める事ができます。また、AGCレスポンスの立ち上がり時間や減衰時間も、高速/中速/低速から選べ、リミッターが効く応答時間を変更する事もできます。リミッターに関して、ここまで詳細な設定ができるハンドヘルドタイプのカメラは見た事がありません。
 そこで、実際にXLRから、音楽を入力して極端なリミッター検証を行ってみました。残念ながら、XLRで送れるミキサーや音声機材が弊社になく、ステレオアンプのヘッドフォンジャックを無理矢理XLR入力に変換しての検証だったので、音質は悪いのですが、リミッターの働き自体はよく解かりました。
 結論として、-20dbくらいを基準値にして、-5dbか-8dbあたりでリミットするのが良い結果が得られました。(AGCレスポンスは今回デフォルトの中速でした)多少圧縮して、下の音も持ち上げたい場合は、-12dbを基準で、リミットを-5dbでも良いかもしれません。小演劇などの舞台で、ささやき声と怒鳴り声など、レンジ幅が広いような場面で、マイク立てた場合はおそらくこの設定にすると思います。(マイク自体のインピーダンスにもよると思いますが)ところで、基準レベルでリミットすると、極端にリミッターが効いて、つまった感じの印象になります。例えば-20を基準とした場合、リミッターの設定を「基準レベル」にすると、-20あたりでリミッターを効かせる事になるわけですから、結果として音を極端に圧縮する事になります。ダイナミックレンジも狭くなり音質は良いとは言えません。特殊な場面では役に立つのかもしれませんが、今の所、弊社の用途では不明です。
 さて、Z5Jとのリミッターの効き具合も比較してみました。Z5Jはいかにも「リミッター効いてます」的なフワフワした感じの音の抑え方なのに対し、HM650は、上記のような設定をする事で、自然な感じの抑え方に聞こえました。場面によりAGCレスポンスも調整できる事を考えると、このリミッターはワンマンオペレーションにとって強い見方になってくれると思いました。(ただし、多少専門性が高くなるので、クオリティー云々は置いておいて、Z5Jのように、オン/オフ程度のほうが良い、という意見もあるかもしれません。)
 多少気になったのは、リミッターがオンの場合でもインジケーターが0dbに到達した時点で赤くなる事です。視覚的には音割れしていると思ってしまいますが、音をヘッドフォンで聞いている限りでは、割れている印象はないので、こちらは表示上のみの問題のようです。Z5Jの場合は、リミッターをオンにした時点で、インジケーターが赤くなる事は無かったので、確実に音が割れた時だけ、赤く点滅するようになれば精神的にも良いかもしれません。
HM650イコライザーはかなりグラフィカルなUI 補足ですが、リミッター設定がオフでもオートモード時は-5dBFSのリミッタが強制的に働くとの事です。(リミッターが働かない条件はリミッタ設定がオフでマニュアルモードの時だけ)
 その他、Z5Jにもあったマイク入力レベルの詳細な設定をはじめ、イコライザーまでついてます。(イコライザーは、例えば、RODEのラベリアマイクなど、多少こもった感じになるマイクには有効かもしれません。)イコライザーのUIは数字選択ではなく、視角的なグラフィックになっており、こういうのは他のカメラで見た事がありません。
 音周りに関して、こんなに長く書くつもりは無かったのですが(汗)、最後に実際にリミッターのオンオフの比較、またZ5Jとのリミッター比較を行った映像を上げておきます。




地味だけど意外と便利なAUX端子

HM650AUXがあるのはめずらしい。 最近の業務用ハンドヘルドタイプのカメラではXLR入力やプラグインパワーのMIC端子はよく見ますが、AUX端子を備えているカメラと言われると思いつきません。HM600/HM650はヘッドフォン端子の横にAUX端子が存在します。これが結構便利なんです。たとえばテレビの画面撮影をする事など弊社では結構あったりしますが(最新のテレビUIの紹介や解説ビデオなど)、音に関しては、いつもテレビのフォーンジャックからXLRに変換してカメラに入力していたりします。こんな場面でミニジャックのAUX端子が最初からあればとても便利なわけです。入力のインピーダンスも、0db、+6db、+12dbと三段階から選択可能です。また音声を内蔵マイクに設定している場合は、入力した時点で音声入力がAUXに自動的に切り替わる仕様です。


高精細、クラス最高の明るいカメラ

HM650Z5Jと並列で撮影しゲインを変えながら朝焼けを撮影してみた
 8bit4:2:0記録というスペックに不満を持つ方もいらっしゃるようですが、このカメラの用途としては特に問題ないと思っています。合成前提で使いたいのであれば、SDIから10bit4:2:2が出ているということで、何らかのレコーダーで受ければいい話でしょう。画質に関して云々言うつもりはありません。弊社としては十分綺麗な印象です。Z5Jとの比較、という点ではHM600/650のほうが好みの画質で、この部分もHM650に強く引かれた要因です。特に晴天時の発色はすばらしいものがあり、空の色や緑の綺麗さにドキっとします。精細感も高く、細かい描写もシャキっと描かれている印象を受けました。(といってもZ5Jは横が1440のスクイーズなので、比較するのも酷ですが‥)あくまで弊社の印象ですが、Z5Jの画は現実的(悪くいってしまうと、つまらない画)、HM600/650の画は印象的といった感じです。長らくZ5Jを使っていたユーザーはきっとHM600/650の画調は新鮮に感じると思います。MH650では.h264(mov形式)での高ビットレート収録もできるので、画質重視の方はこちらのフォーマットを選んでもいいでしょう。弊社としては編集の事も考えるとMPEG2ベースのフォーマットは扱いやすく助かります。NX5JユーザーなどAVCHDでの編集に馴れている方はAVCHDでの収録もいいでしょう。
HM650クリックでオリジナル画像を表示します気になる明るさに関してですが、Z5Jと比較映像を撮影していて、あれ?そこまで明るくないぞ?と疑問を持ちつつも、S/Nは確実に良い印象を受けました。ただそれも9dbくらいまでで、それ以降さほど変わらず、うーんと思っていた所、先に書いた通り「拡張モード」が本来の明るさ、というのを後で知りました。最初から拡張モードにしていると、逆に屋外の撮影では明るすぎるため、デフォルトでは「標準モード」となっているようです。そこでさっそく拡張モードに変更、なるほど明るいです。タイムリーにも、比較的暗めの地下の撮影現場にHM650を持ち込む機会があり、ライトも持ち込めなかったため地明かりでの撮影になりましたが、拡張モードのおかげで、通常12dbくらいにしなければならない現場も6dbでも十分な明るさが確保できました。これが本来の明るさだったということで、逆に考えれば拡張モードに対して標準モードは、マイナスゲイン的なものとも受け取れます。(感度を低くしS/Nを少しでも向上させる)標準/拡張モードの切り替えを「お気に入りメニュー」に登録しておけば、一発で呼び出せ、場面に合わせて変更できるので便利です。数年前リリースされたZ5Jと比較するのは酷な気がしますが、一応、比較映像を下記にアップしておきます。明るさもさることながら、精細感は歴然とした差が現れています。




Z5J同様、細かい設定が出来るピクチャープロファイル

HM650これまたグラフィカルなUI、使いやすそうマルチカメラ撮影の際、他のカメラをまぜる時など、Z5Jの詳細なPPが役に立ちました。特にRGBCMY毎に、色の深さを調整できる機能は便利で(SONYしか無いとメーカー側のセミナーで聞いた記憶がある)、最終的にはこれで他のカメラの色味と合わせる事もありました。今回、HM650では特にピクチャープロファイルを詳細に変更したりしてなかったのですが、ちょっと見た限りでは、カラーマトリクス機能が近いものを感じました。しかも驚くべきUIです。視角的にも非常に分かりやすい。当然、作ったPPは保存可能です。今後のマルチカメラ運用で力を発揮するかもしれません。もちろん、もともとは制作側の意図にあった色を作るためのものでしょうが、筆者としてはデフォルトの色味が結構好みなので、使う時は限定的かもしれません。カラーマトリクスはどこかで腰を据えて検証していたいと思います。


バリアブルフレームレート

 バリアブルフレームレートを搭載しているのもHM600/650の特徴です。とある現場でスローモーション撮影が必要になり、その際にバリアブル撮影は結構重宝しました。それだけに1920x1080の60pが無いのが悔やまれます。有償ファームでもいいので、いずれ1080 60pが実現することを期待しています。(HM650のポテンシャルならきっと出来る?)余談ですが、記録モード変更時に再起動する度に何故かシャッタースピードが1/60に戻ってしまいます。室内で1/100で固定していた時などは、再起動時に若干注意が必要かもしれません。
 また、60i記録やHD+SDなど、違うフォーマットでのデュアル記録をしている場合もバリアブル撮影は出来ません。基本、シングル記録時か、同フォーマットでのデュアル記録で、ともに24p、25p、30p記録時に限るようです。
 尚、メニュー内の「AE LEVELスイッチ」を「AE LEVEL/VFR」にしておけば、バリアブルフレームレート時には本体側面の十字ボタンの右左でフレームレートが可変できるようになります。動きに迫力を出すために、若干映像を早めたい、もしくは遅くしたい時など、フレームレートを微調整しながら記録する時には重宝すると思います。


実際の運用でのバッテリー駆動時間

HM6501日のフルロケでは4本持って行ったほうがいい HM650は高性能、高機能の反面、Z5Jより電源を多く要します。のべ8時間程度のロケでバッテリー(SSL-JVC50)は4個必要でした。(実際には3本完使用で、残り1本を若干使った感じ)もちろん、デュアル録画を行っていましたので、通常より電源は食っていたのでしょう。しかしながらZ5Jの場合、テープとメモリーの同時回しをしていたとしても、NP F970が2本あれば、1日のロケでは十分でした。HM600/650を本格運用される場合、現段階ではバッテリーは余分に買っておく必要がありそうです。ただ近いうちに大容量バッテリーが発売されるような事も聞いています。現状のバッテリーを見てもSONYのNP970の2/3くらいの体積なので、多少大きくなってもいいので、大容量のバッテリーを早く発売してほしいです。尚、充電に関しては、カメラでの充電ができるのと、2連のチャージャーはIDXから出ています。(純正バッテリーもIDX製)数個のバッテリーを1台のカメラだけで充電するのは現実的ではありませんので、一緒に2連チャージャーも購入する事になりそうです。バッテリー面に関しては単純にZ5Jと比較してしまうと、(現時点で)交換が頻繁になるのは残念な部分ですが、それ以上に現場で使いやすいので許す事にします(笑)長らくSONYを使用してきた弊社では、従来のバッテリーやチャージャーがそのまま後続のカメラに使えるのは大きなメリットでした。NX5Jに関してもZ5Jのアクセサリーキットがそのまま使えるので無駄な出費は避けられるでしょう。ただ同メーカーでもPMW160など、HM650に近いスタンスのカメラでは、XDCAM系のバッテリーに流れてしまい、どちらにせよバッテリーやチャージャーは買い直す必要があります。シリーズから派生した後続のプロダクトに関しては、なるべく共通のアクセサリーやバッテリーを共有できるように、消費者にやさしい販売を期待したいですね。


多彩な記録方式とフォーマット


 実機の操作性や画質面、運用面はこれくらいにして、ここからは実際の収録フォーマットやその後のNLEでのフローに関して記して行きたいと思います。今回はHM650をお借りする事が出来たので、収録フォーマットが豊富なHM650の記録面を中心に話を進めさせていただきます。まずMac環境の弊社としてはmov収録があるのは助かります。AVCHDという、もっとも汎用性高いフォーマットも選べるのは評価高いですが、フォーマット毎に必ず00000.mtsから始まってしまうAVCHDは、複数ロールに渡った場合ファイル名の重複が避けられません。そのため最近になってNLE(主にAdobePremiereProCS6)でオフライントラブルが相次ぎ、弊社にとっては若干使いづらいフォーマットになってしまいました。HM650クリップの名前が任意で割り当てられるのは助かるHM600/650ではAVCHD以外、クリップ名は8桁の英数字になり、リセットしない限りSDカードを交換、フォーマットしてもファイル名は重複することはありません。上4ケタに英数字、下四桁は0001からの連番が割り当てられ、上4ケタの英数字はカスタマイズ可能です。クリップ管理、案件ごとの素材アーカイブがしやすくなるだけでなく、NLEで万が一オフラインになってしまってもクリップ名の重複もなく安心して再リンクできます。ちょっと不思議なのは、HM600/650で収録したmov形式のHD映像(MPEG2)は、Macでしか再生出来ない事です。後でWindows環境の方に渡す可能性がある場合は、mov以外の形式で収録しておいたほうが良いでしょう。(EDIUS6.5の最新Verでは、HM650で収録したmovも読める事を確認しています。)
HM650これがキモ。デュアルやバックアップ記録 周知の通りHM650に関しては一方のスロットでHDを記録し、もう一方でSD記録することも可能です。Z5JではテープでHD記録、メモリーでSD記録が出来たので弊社でも長らく重宝していました。弊社が主に手がけている企業VPや各種コンテンツ制作等では現在でもDVD納品などSD案件はまだまだ健在ですので、編集用に最初からSDで収録しておけるのは便利です。(特にインターレース素材の場合、HDからのダウンコン問題も避けられます。)SD記録の場合、フォーマットは.h264のmovになるようです。編集ソフトでの扱いに不安がありましたが、特にDV_NTSCと変わらずストレス無く編集出来ました(弊社環境はAdobePremiereProCS6)
HM650HM650のHD+SD同時収録はZ5Jユーザーなら欲しいはず。 さらに欲が出るとすれば、別フォーマットでのHD+HDが出来たら利用場面が広がるということ。Mac前提だとmov収録が便利ですが、Windows環境の方にも素材を渡すとなると、MP4やMXF形式となると思います。例えばmovで収録しながら、もう一方でMP4収録、なんて事が出来たら嬉しいですね。HM650の「FALCONBRID」はすごいという噂は聞きますので、将来的にそんな事も可能になったりするのでは?なんて淡い期待を持ってしまいます。
 尚、HM650で収録可能なHDでのh.264のmov収録、またSDでのh.264のmov収録、ともに30p(プログレッシブ)が選択できませんでした。これはちょっとだけ残念ですが、他のフォーマットで30pを選べばいいので問題はありません。

収録映像のNLEソフトでの実際の運用

HM650すべてのフォーマットでスパンを検証してみた。 テープ時代の映像の取り込み方法は「キャプチャ」という方法で統一されていましたが、ファイルベースになってから、映像をソフトへ取り込む方法は、ソフトによって結構クセが出てきました。たとえばご存知の通りFCPに関しては基本的にネイティブには対応しておらず、一端mov形式にリラップされるか、ProResに変換するかになります。(FCP 7では基本的に「切り出しと転送」でmovに変換しながらの取り込みでした)PremiereProはネイティブ対応ですがメーカーは「メディアブラウザ」からの取り込みを推奨しています(後述参照)HM600/650の豊富なフォーマット(mov、MP4、MXF)は、基本的にはMPEG2ベースが主であり、NLEソフト上での扱いに於いては、Z5Jユーザーが長く慣れ親しんで来たHDVの使い勝手とさほど違わないと思っています。HDVも元はMPEG2コーデックであり、longGOPではあるもののNLEソフトでは比較的サクサク動きました。FCP7時代も、HDVは弊社ではとても編集しやすいフォーマットでした。(もっとも、規格化された当初はやっかいな映像形式でしたが‥)25MbpsでDV_NTSCと基本は同じビットレートでありながらHDサイズのため、ファイルの容量的には助かっていました。HM600/650は高画質モードで35Mbps。ということは、ファイル容量だけで言えば、HDVと比較しても1.4倍程度で済む計算です。一方でAVCHDや.h264等で撮影してしまうと、編集の時に若干モタついてしまう場面もありますので、弊社はMPEG2ベースの収録はとてもありがたいのです。まだまだ居残り組の多いFCP7にいたっては、AVCHDで収録してしまったら後が大変、ProRes変換で数倍にも容量膨れ上がってしまいます。FCP使いには、MPEG2ベースのmov収録は非常に扱いやすいかと思います。また、Edius等ではAVCHDネイティブはサクサクですが、AEとかPrでガシガシやっていくとなると、MPEG2ベースのほうが軽くて扱いやすいのです。何より、それらが汎用性高いSDカードで収録できてしまう、というのですから、願ったり叶ったりなわけです。このあたりの事を考えていくと、弊社としては弊社編集環境に適したカメラとして、HM600/650以外に選択肢が見つかりません。
 弊社はMac環境なので、mov形式のMPEG2 35Mbpsがメインになると思います。またはEdius等で扱う事も考えると、XDCAM EX互換のMP4(これも基本、同じMPEG2)これにいずれかのフォーマットで収録するのが常になりそうです。せっかく実装されているAVCHDもいいのですが、前述の理由で弊社は積極的に使うことは無さそうです。

NLEでの分断、結合問題が多いスパンクリップ

 ところで、実際の編集時に気になる事として、長時間録画したクリップのスパン(FAT形式の規格により、ある一定の容量に達するとファイルが分断される事)の運用です。たとえP2であってもSxSであっても、スパンは避けられません。問題はそれをNLEで結合した際、結合部分でコマ飛びや音飛びが発生しないかどうかです。実はZ5J時代、メモリー収録したHDVファイルを、収録済みのCFカードから直接FCP7の「切り出しと転送」で取り込むと時折コマ飛びが確認され、頭悩ませた事がありました。これはSONYから提供されていたFCP7用のプラグイン(Sony Recording Unit RAD Plugin)の仕様のようで、ダウンロード元のサイトには、トラブルについて責任は持てない的なお断り書きが書いてある始末。で偶然発見した対策としては、収録したCFから直接呼び出すのではなく、一端イメージ形式でMacのHFS+フォーマットのHDDにコピー、そこから「切り出しと転送」で取り込む事でトラブルを回避できました。(実はこれ、知らない人多いと思います)
 さて、HM600/650の収録素材はどうなのか、可能な限り検証しました。ただ以下の結果は「カメラ:GY-HM650 ファーム:v0102(現時点で最新)、MacはOS10.7.5、PremiereProはCS6の最新アップデート済み版、FCP 7、FCPXも同じく最新版」という条件です。結果として弊社環境では、いずれも問題出ませんでしたが、以下、スパンクリップの検証結果を、それぞれのソフトの取り込み方法と一緒にメモしておきます。

-AdobePremiereCS6-

 QuickTime(MPEG2)、QuickTime(.h264)、MXF形式は、プロジェクトに直接呼び込みでも、メディアブラウザ経由でも、クリップは分断された状態で呼び込まれました。しかし、いずれの方法で呼び込んだものでも、シーケンスに連続で並べた際、結合部分で映像はコマ落ちする事無く連続していました。SD収録(.h264)も基本的にQuickTime(.mov)になりますが、同じく直接呼び込み、メディアブラウザともに結合部分の問題は出ませんでした。AVCHD形式は、プロジェクトに直接呼び込みではクリップは分断されていましたが、結合部分でのコマ飛びなどの問題は何故か確認されず。メディアブラウザ経由で呼び込めば、すでに結合された1本のクリップとして認識され、こちらも結合問題は無い模様です。唯一、MP4(XDCAM EX互換)だけはメディアブラウザから読み込む必要がありました。メディアブラウザでは「互換」というだけあって、XDCAM EX形式として認識されます。この時点で分断されたクリップは1本のクリップとして認識されているので結合部分の問題は無いと思われます。

-FCP7-

 QuickTime、.h264(QuickTime形式)SD収録(QT .h264)に関しては、すでにQuickTimeになっているので、「切り出しと転送」は使わず、直接ブラウザにクリップを呼び込む事で取り込みました。呼び込んだ時点で分断されてはいましたが、シーケンスに連続で並べて調べても特に結合部分での問題は確認されず、シームレスに再生されました。余談ですが、さすがはQuickTimeだけあって親和性は高いのですが、1920x1080 .h264のmovだけは、PremiereProCS6のほうが動作は軽快でした。(32bitのままでディスコンになってしまったので仕方ないですね)AVCHDはProRes変換が必要なため時間的な部分で取り込んでの検証は出来ませんでしたが、切り出しと転送ウインドウで見た限りでは、1本のムービークリップとして認識されていたので、おそらく結合部分の問題は無いと思われます。それでも出たとしたら、Z5Jの時のような対処で解決するかもしれません。MXFはサポートされておらず未検証。またMP4もXDCAM互換で、SONYから提供のプラグイン(オーナー申請有り)を入れないと取り込みできないので未検証です。尚、HM600/650付属のCD-ROMには、Windows、Mac用に収録クリップ管理の専用ソフトが収録されているようです。こちらは未検証ですが、必要に応じてMP4からQuickTimeへの変換、分断されたクリップの結合、取り込みなどが可能となっている模様です。一手間加わってしまいますが、必要に応じて、これらのソフトを併用するのもいいかもしれません。

-FCP X-

 こちらもQuickTime収録のものしか試すことができませんでしたが、基本的にFCP 7と同状態で、特にスパンクリップの問題は確認できませんでした。尚、FCP Xの場合「トランスコードしない」を選べますが、AVCHD等はmovに一端変換されます。最初からmov収録をしておけば無駄なコピーもなくネイティブで扱えます。

 さて、スパンクリップに関しては、ざっとの検証でしたが、今の所、弊社のメインのNLEソフトであるAdobePremiereCS6ではHM600/650の収録映像の運用は問題なさそうです。FCPに関しても、最初からmov収録しておけば、まず問題ないと思います。今後の運用において、問題点の発見や解決方法などが出てくるようであれば、また追記させていただきます。



 前半、後半にわたって、Z5Jユーザーの立場からHM650のレポートを書かせていただきましたが、筆者としても、久々にエキサイティングな検証、レポートでした。HM650のすばらしい部分を感じながら筆を進めたのと同時に、Z5Jはやはり優秀なカメラだった、というのをあらためて感じたレポートでもありました。メーカーの違いはあれど、Z5Jの操作性や運用面のバランス、これを引き継げる今の時代にマッチしたカメラ、それは間違いなく現時点でJVCケンウッドのGY-HM600/650かと思います。今回のレポートは弊社にとっては始まりであり、ここから本格的な付き合いが始まると思っています。もちろんすばらしい面だけではなく課題もあります。その課題が「ダメ」なのか「クセ」なのかを判断するのは個々の問題でしょう。弊社にあるどのカメラにも「クセ」は存在します。しかしそのクセを知りながらウマくコントロールし、カメラが手に馴染むようになって、初めて「使えるカメラ」になると思っています。HM600/650に至っては、ファームウェアのアップデートという形で現在も進化しています。ここは本当に高く評価したい部分です。(弊社が購入する決め手となった部分)Z5Jがある意味業界のデファクトスタンダードだったように、是非HM650もスタンダードと言われるカメラに育って欲しいと切に願って、今回のレポートを締めくくる事にします。引き続き運用していく過程で、弊社FacebookやNewsで臨時レポートして行きたいと思いますので、その際はまたご参考ください。


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