2015年4月10日 of GAIPRO.NEWS

WHDI202TR

milk_btn_prev.png

milk_btn_next.png

4K撮影が楽しい!GY-LS300の正体とは? 前編

2015.4.10

GY-LS300ちょうど1年前の春はGH4が出て弊社Newsでも2回にわけてレポートを取り上げていました。AG-AF105の後継を強く望んでいた弊社でしたが、GH4は基本DSLRのためそのままの運用ではなかなか厳しく、度重なる検証と工夫を経て現在はGH4が企業VP系ではメインカメラとなっています。GH4の強みはなんといってもあの小さな裸体で4K動画が気楽に撮れてしまうところです。しかしながらFHD収録では時々AF105を持って行く事もあります。理由は「結局現場で使い易い」からです。NDフィルター内蔵とXLR音声入力、HDMI/SDI出力等、オールインワンのカメラは現場フローをよりシンプルにします。そんな中、JVCケンウッドから、4Kで、センサーがスーパー35で、センサー読み出し範囲は自由自在に変えられて、NDフィルターも4段階装備のマイクロフォーサーズカメラが出るという話が持ち上がります。MFTフリークでGY-HM600/650を愛用している弊社が飛びつかない訳がありません。まさにそんな「夢カメラ」とも思えたGY-LS300、縁あってメーカーから借りる事が出来たので、さっそく弊社目線、現場目線でのレポートをお伝えしたいと思います。尚、GY-LS300の基本的な作りはHM600/650を踏襲していますので、以前のGY-HM650のレポートも参考になると思います。


このカメラの真価はVSM

LS3004K撮影時は80%〜100%まで可変可能なVSM ここにすべての魅力が詰まっているカメラだと再確認したVSM「バリアブルスキャンマッピング」。マイクロフォーサーズ(以下MFT)レンズの中にはイメージサークルに余裕があるレンズも存在しますし、またEFレンズやその他のあらゆるマウントのレンズ資産を活かせるのも大きいです。驚くことにオリンパス製のMFTレンズはスーパー35センサー領域をフルで使用してもケラれなかったりします。従来のマイクロフォーサーズからスーパー35の領域にセンサーを拡大するという事はどういう事か?それは、これまでクロップされていた領域を広げる事ができる、クロップファクターを少なくできる、という事です。MFT以下のセンサーでは広角側がツラいという場面があると思います。NOKTONMFTではおなじみNOKTON、画角が少しでも広がる意味は大きいBlackmagicPoketCinemaCameraでクロップファクター問題が話題になったのは記憶に新しいです。GY-LS300では、VSMによって従来撮れなかった撮像領域を可能な限り広げる事が出来ます。例えば弊社にあるフォクトレンダーNOKTON17.5mmや25mm、こちらは多少の周辺減光を許容すれば最大で従来から15%ほど画角を広げる事が出来ました。(VSM設定値は92%)オリンパスのMFTレンズに至っては、例えばM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8や17mm F1.8等はセンサー100%でもケラれないので、従来のMFT使用時の画角から最大で25%も広がります。VSM機能はレンズ資産をフルに活用できるすばらしい機能です。以下、弊社所有レンズで検証したリストです。

LUMIX7-14mm / F4.0 >> 8mm以上で86%(4KDbyD)がOK 7mm最広角は80%(MFT)でギリ

LUMIX12-35mm/F2.8 >> 14mm~25mmは86%(4KDbyD)がイケる。それ以下、もしくはそれ以上だと80%(MFT)でギリ

LUMIX35-100mm/F2.8 >> 全域で86%(4KDbyD)がOK。50mm付近を越えると95%まで広げても使えそう。

LUMIX14-140mm(初期型)>> 基本80%(MFT)が無難 25mm以上で86%(4KDbyD)は可能だが、どの読み出し範囲でも結構周辺減光が目立つ。

Nokton 17.5mm >> 86%(4KDbyD)はOK、周辺減光を許容すれば92%くらいまで広げられる。

Nokton 25mm >> 86%(4KDbyD)はOK、周辺減光を許容すれば92%くらいまで広げられる。

 残念な事に、弊社MFTレンズ資産のほとんどがLumix製。Lumixレンズはどれもスーパー35mmフル領域はNGでした。GY-LS300を使っているとオリンパスのMFTレンズが欲しくなってきます。

LS300さすがに解放の画は甘いがコスパの良い大口径TAMRON製EFレンズ 一方でマウントを変換してEFレンズ等をつければ、当然のごとくケラレもなくスーパー35センサー領域フル読み出しで収録が出来ます。センサーを広く使う事で深度をさらに浅くしたポートレートを撮る、という用途も出てくるでしょう。たとえば弊社に転がっていた激安TAMRON EFマウントレンズ群は軽くて明るいので、GY-LS300にはちょうど良いバランスです。AG-AF105の時はよく使っていましたが、どうしてもクロップファクターが出てしまったので、GY-LS300ではVSMで従来の画角で使えるのが嬉しいです。
Facebookでも書きましたがEF等の大き目のレンズで運用する際は注意が必要です。カメラ本体の底面にある1/4ネジ穴は結構後ろに掘られているため前傾荷重になりやすく、サポートロッド等でカメラ全体の重心を移動する、もしくはカメラプレートの取り付ける位置をずらす等の工夫が必要でしょう。

 逆にVSMによってクロップファクターを最大限利用する、という使い方もあります。特にHD収録時は、センサー読み出しを43%まで狭める事が出来ますので、フルHD収録でより望遠を狙いたい場合は武器になるでしょう。Panasonic GHシリーズには「EXテレコン」という機能が存在しましたが、まさにあの機能がバリアブルで利用できるイメージです。VSMはレンズの持つ可能性を最大限活かすことができる、とてもユニークで頼れる機能だと思います。尚、4K収録時は86%、フルHD収録時は43%でドットバイドット読み出し(メーカー公表値)となりますので、各VSM設定値での画質評価は今後行いたいと思っています。


快適な操作性、豊富なアサインボタン

GY-LS300WBは液晶のスティックに速攻アサインすべし GY-LS300はIRIS A/M、AF/MF切り替えやAEレベル、シャッター等の専用ボタンを設けていながら、その他のアサイン可能Fnボタンはなんと14個、長押し動作も含めると物理的アサインはかなりの充実度です。液晶手前に3つ、液晶後ろ側に4つ、グリップ上に2つ、アイリスダイヤルに1つ、そして液晶脇スティックの上下左右で4つ。HM600/650の時から感じていましたが(我々の声を多く反映させていただいた)、アサインボタンで最大限カスタマイズできるのがJVCCAMの醍醐味です。特にWB(WBペイント/ケルビン設定)は早々にアサインボタンに登録しておくのが良いでしょう。弊社は液晶脇スティックの”上”にWBを割り当てています。WHT BALスイッチを「PRST」にした際、即座に目的のケルビン値を呼び出すためです。(詳細モードで100k単位で可変可能)尚、AWB時はWBペイントモードになり4軸のカラー補正が可能になります。スティック下は液晶バックライトをアサインしています。各環境下において液晶の明るさを即座に変更するためです。(明るい/通常 の2段階調整)後述しますが、グリップ上部のアサイン7にはPUSH AFを割り当てておくとハンディ撮影時に便利です。その他、現状ではデフォルトのアサインにしていますが、もちろん思うがままに組み替えも可能ですので、自分の現場スタイルにあったアサインをしてカメラをカスタマイズすると良いでしょう。

 またHMシリーズではおなじみの、液晶脇についているスティックでの操作。Canon C100等でグリップにあるスティックに便利さを感じている方なら分かると思いますが、あらゆる操作がここに集約されていると言って過言ではありません。こればかりは使ってみて実感してほしい部分です。ポイントは「液晶脇にある」という事です。正直、AF105のスティックはとても使いづらい位置にありました。もちろん好みもあると思いますが、位置は重要ですね。

GY-LS300すぐに呼び出したい項目はお気に入りに登録 HM600/650から踏襲されている「お気に入り」機能も便利です。通常メニュー表示時に「DISPLAY」ボタンを押し「お気に入り」メニューへ移行する方法が一般的ですが、実際は通常メニュー表示時に液晶スティック上の「MENU/THUMB」ボタンを長押しで「お気に入り」メニューへ移行する方が快適です。(同じボタンでも単押しと長押しで動作を変えている部分もJVCCAMの素晴らしい部分でしょう。隠れメニューもあるかもしれません。)もう一度ボタンを長押しすると通常メニューに戻ります。頻繁に呼び出す項目はお気に入りに登録しておくと良いでしょう。弊社の場合「VSM/GAIN L M H/拡大フォーカス/WDR/暗部調整/カラーマトリクス/LCDピーキング」を入れています。尚、お気に入り追加は、登録したいメニュー項目を選択した状態でUSER3ボタンを押せばすぐに登録できます。

 若干惜しいのは、HM600/650の時はトップハンドル先端から開閉する仕様だった液晶パネルが、今回から本体側面に移動した事で、液晶を閉じたままだと操作できないボタンが出てきてしまった事です。閉じたまま操作不可能なボタンは、USER3/4/5、DISPLAY、STATUS、ストッロセレクトボタンです。舞台等で液晶を開けない場合はネックとなるでしょう。幸い、弊社では液晶を閉じたままVFのみで操作する場面はあまり無いので、それほど問題ではありません。


レンズ付け根のスイッチ”PRESET AUTO”とは?

GY-LS300ゲインオートをプリセットしておけばいざという時に使えるかもHM600/650には完全オートモードへのスイッチは存在しましたが、GY-LS300で面白いのは「PRISET AUTO」がスイッチの中間に付いた事です。何をオートにしておきたいかをあらかじめプリセットしておく事で、DSLRで良く見る「A優先、S優先」モードを作っておけたり、ゲイン(ISO)だけをオートに出来たりします。またフルタイムAWBも設定できます。完全AUTOモードがDSLRで言う「P」モード/プログラムオートに相当するようなイメージです。(ただしWBも強制オートになる)ただ、電子接点付きスチールレンズの場合、アイリスはパカパカと可変しますので、実際にオートに割り当てる項目はゲインやシャッター、WBに限定したほうが良いでしょう。オートにしたくない項目は「スイッチに従う」に設定しておきます。

気になるAF性能は?

 弊社はDSLRや大判素子系のカメラでフルタイムAFを使う事はまずありません。ただ時にどうしてもフォーカスを追えない物体や、ある程度フォーカス精度を妥協しても自動で追尾させるような用途には稀に利用します。GY-LS300に関してはまだそれほど現場で使っていないので正直なんとも言えないところです。あくまで弊社印象としては、Lumix系よりズイコー系のほうが迷いが少ない印象はありました。ただしコントラストAFはどうしても極端に明るさが違う場面や暗い場面では迷う事が多く、GY-LS300でもそれは顕著な印象です。また、Canon EOS 70Dで記憶に新しいデュアルピクセルCMOSは、AからBにピントを合わせる時、行ったり来たりがほぼ無い印象ですが、コントラストAFの場合どうしても焦点が合う際にワブワブっと画面が揺れてしまいます。
 それでもGH4の場合は追尾AFやタッチAFの他、計測ポイントや計測範囲も狭めたり広げたりできるのでシーンに応じてAFを上手く利用する事が出来ていましたが、LS300は通常のAFか顔検出しか選択肢がないので、場面での使い方は限定されそうです。 もちろんLS300の液晶はタッチ式パネルではないのでタッチAFは不可能ですが、AFの計測範囲や計測場所を自由に変えられるモードは付けて欲しいものです。
GY-LS300AFやAEにロックがかかると、隣に「L」の文字が付く 一方で、フルタイムAFではなく、後述するPUSH AFのほうが現場では実用的に感じます。また痒いところに手が届く機能としてAFロックがあります。PUSH AFをアサインボタンに割り当てておく事で、フルタイムAF時にPUSH AFを押せばフォーカスがロックされます。そしてAFの隣に「L」という分かり易い表示が出るのが良いです。これはAEロックの際にも同じ表示「L」がでます。この機能/表示は是非HM600/650にも実装してほしいものです。(AFは許容範囲に合わせて適宜利用がよろしいかと。AFに関しては今回はファーストインプレッションのみですが、後日検証はします。)


4K撮影時におけるLS300のフォーカスアシスト

 撮影時のフォーカスアシスト方法はいろいろありますが、中でもHM600/650シリーズでもおなじみのEXPAND(拡大)フォーカスは便利です。デフォルトではグリップ上にあるアサイン8がEXPANDボタンとなっています。JVCAMの利点は「ほぼ、どこのアサインボタンにも設定可能」な部分ですので、自分が使い易いところにセットするのが良いと思います。またHM600/650とは違い、LS300は液晶脇スティックで拡大位置を動かせます。そしてスティック真ん中を長押しすると位置がリセットされます。また「一定時間(数秒すると拡大解除)/一時的(ボタンを押している間だけ)/切り替え(ボタンを押して拡大、再度押して解除)」と動作を変更でき、さらに録画中も動作します。このあたりはユーザーの声が良く反映されています。若干残念なのがGH4のように拡大率を任意に変更できず、ドットバイドット拡大のみ、という事です。GH4の場合はダイヤルで即座にドットバイドット以上まで拡大できます。HM600/650の時は収録もFHDですのでそれほど気になりませんでしたが、やはり4K収録となるとよりシビアなアシストが欲しくなります。バリアブルな拡大機能までは求めなくとも、できればx2程度のEXPANDは欲しいと感じました。

GY-LS300割り当てによりグリップ手元でEXPANDとPUSH AFの併用が可能AF対応のレンズであれば「PUSH AF」も使えます。弊社はHM600/650同様、アサイン7にPUSH AFを割り当てました。(デフォルトではRECになっています)電子接点付きAF対応レンズが前提になりますが、PUSH AFを短押しで瞬時フォーカス、長押しで、押している間だけフルタイムAFになる、という使い分けができます。さらにEXPAND(拡大)とAFの併用も可能です。グリップを握った手の指先で拡大とプッシュAFができるのはハンディの時に威力を発揮しそうです。
フォーカスアシスト機能を「遠近」に設定すれば、フルタイムAF中に任意のフォーカスに持っていく事も可能です。こちらはHM600/650にも実装されている機能ですが、GY-LS300の場合は残念ながらレンズのフォーカスリングは動作せず、ズームレバーに「FOCUS」を割り当てズームレバーで操作します。(Facebookでもお伝えしましたが、GY-LS300はグリップ部分のズームレバーに「FOCUS」を割り当てることができます。)

 さて、もう一つはピーキング機能です。AF105運用時は「フォーカスインレッド」という赤い輪郭線で強調する機能を愛用していました。他メーカーも比較的この機能を搭載していますが、AF105も場合、画面がカラーのまま非常に繊細なピーキング赤が輪郭にチラチラする仕様で、これを使ってピン送りして、それほどフォーカスを外した経験がありません。GH4でもその仕様は踏襲されていて、色の選択の他、L/Hの切り替えがあり、Hにするとかなり繊細なピーキング(輪郭線)が出ます。これに対して、JVCCAMでは「フォーカスアシスト」という名前で同じ機能が存在しますが、実はHM600/650の時からあまり使用していませんでした。他の多くのカメラやモニターと同様にONにすると画面が白黒になってしまうのと、ピーキングレベルをより繊細にするモードが無いためです。できれば、ピーキングレベルの調整が出来るモードが欲しいところです。

 一方で液晶画面自体のディテールを強調するものもあります。実はこちらのほうがフォーカスアシストには有効な気がします。(あくまで弊社の印象)もともと弊社はあまりギラついた画面が好きでないのでHM650購入時は弱めに使っていましたが、慣れてくるとディテールをMAXまで強調してピントを見る場面が多々ありました。それだけにLS300ではHM600/650の液晶脇コンパネにあったピーキング設定専用ボタンが無くなってしまったのはけっこうツライです。また現状では再生モード時は変更できない仕様のようです。(メニュー自体がグレーアウト?)一度撮影モードにもどってメニューを開き、好みのディテールに変更して、再び再生モードに戻るしかありません。一手間かかるので、ここは改善してもらいたい部分です。ディテール強調によるピーキングを頻繁に使われる場合は、専用ボタンが無いLS300ですと「お気に入り機能」に登録しておき、すぐに呼び出せるようにしておいたほうが良いでしょう。

HOODMAN晴天時の屋外ではフードは必須。HOODMAN H-400がベストマッチする尚、液晶の見え方ですが、ここは好みが分かれるところです。良くも悪くもHM600/650と同じ、また液晶の調整は基本ディテールくらいしかないので、あくまでフレーミングと各種確認の用途で割り切ったほうが良いでしょう。グレアパネルですので、屋外晴天時の撮影ではフード必須です。



自由度は高いピクチャースタイル設定

 HM600/650でもおなじみの豊富なピクチャースタイル設定。JVCCAMの日本語メニューでは「カメラ設定」となっています。実はHM600/650の時はそこまで頻繁に操作する事はありませんでした。(撮影の対象が記録的な事が多かったため、そこまで画調に拘っていなかった)そこであらためて触ってみると、なかなか面白いです。まずDR(ダイナミックレンジ)に対する操作というのがあるでしょう。AF105ではよく利用したDRS(ダイナミックレンジストレッチャー)やGH4でもおなじみのハイライト/シャドウ等の設定はGY-LS300ではどうなのか?まずLS300はWDR(ワイドダイナミックレンジ)モードがあり、やっている事はAF105のDRSと同じ。暗部の階調を持ち上げ、ハイライトを寝かせる、というものです。ただAF105のDRS同様、当然ながら暗部のノイズは上がってきます。状況に応じて強弱3種から設定を選べます。WDRモードを使わなくても、シャドウやハイライトを個別に操作する事も可能です。ハイダイナミックレンジな場面でシャドウを持ち上げたい時は暗部調整を「ストレッチ」にします。逆にローコントラストな場面で暗部を締めたい時は「コンプレス」に設定します。強弱も5段階で可変できます。
GY-LS300暗部調整とニーの項目をお気に入りに入れてGH4の「ハイライト/シャドウ」的にハイライトを操作したい場合は、ビデオカメラではおなじみの「ニー」を設定します。「マニュアル」を選んでレベルを100%から85%まで、任意に下げていきます。もちろん下げ過ぎると色が転がる(反転する)事もありますので、慎重にモニターや波形を見ながら操作するのが良いでしょう。できれば、このあたりもGH4のようにグラフィカルなUIで表示されれば、分かりやすかったかもしれません。(GH4のハイライト/シャドウ機能は分かりやすくて評判が良いですね)マスターブラックは、GH4で言う所の「マスターベデスタル」です。デフォルトでは-3に設定されていますが、これも波形を見ながら設定するのが良いでしょう。特にレンズやフィルターによっては黒が浮いてくる事もありますので、ここで補正します。意図的に黒を浮かしたスタイルとしての設定も良いかもしれません(個人的には好きではないですが‥)ガンマには「シネマガンマ」が存在します。AF105でのCINE LIKE Vに雰囲気が似ていて、暗部が引き締まり、若干コントラストが強まる印象です。また「レベル」項目で多少ガンマ値が操作できるようです。CINE LIKE Dのような、ダイナミックレンジ重視型のシネマガンマは搭載されていないものの、実はLS300デフォルトのほうがCINE LIKE Dに近い印象を受けました。CINE LIKE Dファンとしては今後撮影してく中でGH4等のそれと比較してみたいと思っています。尚、このあたりの設定は前述した「WDR」モードをONにした段階で一切無効になります。その他、カラーマトリクス(和やか、鮮やか)やカラーゲイン(彩度)の操作、ディテール調整等ができます。GH4と同様、さまざまに組み合わせて、後でLUTを当てる前提のピクチャースタイルも作れるかもしれません。(ただし当然Log収録ではないので階調幅に限界はありますが)一方でHM600/650には搭載されていたカラーマトリクスの詳細調整(RGBCMY個別のHSL調整)は今回搭載されていませんでした。


業務用オールインワンカメラのアドバンテージ


LS300NDフィルターが内臓されてあると無いとでは現場でのフローに雲泥の差が。 最後に、やはりなんと言っても便利なのは4段階のロータリーNDフィルター実装と音声周りです。DSLR運用時、後付け機器のかさばる要因がND含むフィルターワークと音声だったりします。NDに関しては、GH4ではレンズ前面にV-NDを付けて運用していますが、マットボックスでハレ切りを行っても場面によってはフレアやゴーストが盛大に出る時がありレンズコーティングも無意味になってきますので、リアNDのほうが都合が良い場合もあります。 そしてXLRやAUXピン入力での音声入力の存在。音声周りはGY-HM600/650と基本同じなので、過去の記事を参考いただきたいと思います。(リミッター等の設定の事も書いてあります)JVCCAMの便利な機能に「ステイタスボタン」がありますが、音声周りは特にグラフィカルなUIが表示され分かりやすいです。LS300の音声ステイタス画面は一層ブラッシュアップされていて、状態、切り替え、電源などが一目瞭然になっていました。
LS300SDI、Lanc等、通常の業務機器の端子が揃っているのは心強いSDI出力が備わっているのも業務の現場では大きなアドバンテージです。ただしSDIの場合は、フルHDまでの出力となります。また、HDMIで4K出力した際は、SDIからは映像出力は出来ません。ここはちょっと残念な所ですが、GH4等でHDMIの接続の不安定さを痛感した弊社にとって、SDI出力は必須項目となっています。またLANCリモートは今後の運用面で可能性を感じる部分です。弊社ではNEXT-ZEROさんに作っていただいたコンパクトLANCリモートを愛用しています。以前BMPCC用に作っていただいたリモートではサイドのボタンでEXPANDフォーカスとPUSH AF(USER7に設定)が可能、天面赤ボタンでRECスタートが出来、現場では非常に便利でした。もちろんリーベックやマンフロット等の汎用リモートも使えると思いますし、操作が拡張できるのはいろんな面で助かると思います。


今後の課題/要望と勝手な展望

 さて、今回に関してはインプレッションでの話が多かったのですが、次回は実際に現場に持って行き、気になる画質等も含めレポートをしたいと思っています。最後に現状で見えてきた課題や要望、今後の勝手な展望を書かせていただいてこのレポートを締めくくりたいと思います。

GY-LS300ケルビン値の左横に高い低いの指標が現れるようになったHM600/650に無かった表示として、WBを任意のケルビン値にしている際、数値表示の横に小さくカメラ内部測色の色温度に対して高いか低いかが表示される、というのがあります。三角形が下向きだと低い、上向きだと高い、⚫︎が表示されている時はほぼ適正、という具合です。これはこれで良い表示なのですが、どちらかというとWBよりかは露出が適正かどうかの指標が欲しいものです。大抵のDSLRでは内部測光に対してアンダーかオーバーかを見る指標があり、AG-AF105にも存在していました。特にAF105には簡易的な波形表示もあり、晴天時等、適正露出の判断しにくい場面では命綱になっていました。波形もヒストグラムも装備がなく、ゼブラだけを頼りにするのは、大判カメラとしてはなんとも心もとない気がします。(現状、現場ではATOMOS SHOGUNやSAMURAI等波形が出るモニターの併用を想定していますが、単体での運用こそ、この類のカメラには意味があると思われます)

GY-LS300この表示がそのままレンズ減光補正に活かせれば‥VSM設定時、レンズ周辺減光を図るメーターが実装されているのは面白いと思ったのですが、具体的にこれをどう活かしていいのか、いまいちイメージ出来ませんでした。単純に周辺減光に対してのシグナルとして見る、という用途しか今のところ考えが及ばないので、出来ればこの数値を元にした減光補正機能を実装してもらえたら、と素人ながら欲も出てきます。通常のDSLRではレンズ電子接点を通してそれぞれのデータから周辺減光補正を行っているものもあります。特に同じメーカー同士のボディ&レンズはそのあたりが強みのような気がします。

 ハイスピードモードも欲しいところです。4Kは無理だとしても、FHDで100fps前後のモードを。ここはしばらくGH4の出番になりそうです。(最近になってGH4のFHD96fpsは利用する事が増えた弊社です)

 シャッタースピードはバリアブルにすると1/50も選択できるのは嬉しいですが、できればステップの中に1/50がデフォルトで入っていれば東日本では使い易いと感じます。DSLRでは通常、蛍光灯下等、フリッカーが心配される環境では明るさを稼ぎたい時には1/50にする事が多いためです。

GY-LS300ネットワーク機能が4K収録時には活かせないのは痛いマイナスゲインも欲しいところです。深度と露出のバランスでNDを操作していて、あと一歩のところで露出をきめかねる場面があります。今回現場で実際に撮影していて最低がISO400(0db)というのはどうしてもツラい場面がありました。AF105やGH4と同様、ISO200(-6db)とISO320(-3db)が存在してくれれば、助かる場面は多いです。

 最後にJVCCAMの一つの特徴であるネットワーク機能です。P2P接続も可能でスマホでのリモート操作やライブビューイングなどはHM650でよく利用していて便利なのですが、残念ながらGY-LS300は4K撮影時にネットワークが使えません。これですとGH4でのWi-fiを使った4K撮影時の操作性には一歩譲ってしまう部分です。エンジンの限界であれば仕方ない部分ですが、なんとか4K撮影時のネットワークによるリモート操作だけでも出来るようになって欲しいです。

 さて、ここからは勝手な展望になりますが‥。
86%で4Kドットバイドット読み出しという事は、4Kネイティブの際はそれ以上の画素領域が存在するという事で様々な可能性が考えられます。例えば4K以上の解像度での静止画読み出しやDCI4Kへの対応等です。スーパー35センサーフルの領域を多少犠牲にする事にはなりますが、今後の展開が楽しみになる仕様です。例えばGH4ではファームアップという形で「4Kフォトモード」が実装されました。センサー読み出しをフルに活用する事で、これまでの動画規定にとらわれないマルチアスペクトの映像が収録可能で、そこからの静止画切り出しという形を提案しています。また、多画素を利用したスタビライズ搭載も大いに期待したいところです。特にオリンパス製のレンズやフォクトレンダー製等、手振れ補正が無いレンズに対して、4K収録時でのカメラ内手ぶれ補正が効くようになれば、これは大きな進歩になるでしょう。(光学手ぶれ補正やオリンパスのようなセンサー自体を動かす補正には多少劣るかもしれませんが)

 今となってはLog非搭載等、大判のシネマカメラのスペックとしては物足りない部分もあるかもしれませんが、おそらく今流行っているシネマカメラとは現場の方向性が違うカメラだと感じました。GY-LS300はあらゆるレンズ資産を網羅し、カメラ内である程度完結させるフローの中、確実な装備と操作性が求められる業務の現場にこそマッチする大判シネマカメラだと感じます。またGY-HM600/650が「進化するカメラ」だったように、GY-LS300が今度どのように進化していくかは、とても興味深い所です。
残念ながら今回は時間が無く、ちゃんとしたロケに出ることができませんでしたが、弊社の近所を簡単に撮影したGY-LS300のファーストフッテージをご紹介して締めくくりたいと思います。後編に続きます。


環境が許す限り4Kでご覧ください。


関連記事/関連リンク

【GAI News.130410】4K撮影が楽しい!GY-LS300の正体とは?-後編-
【GAI News.130305】Z5Jユーザーから見たGY-HM600/650 -後編-
【GAI News.130131】Z5Jユーザーから見たGY-HM600/650 -前編-

milk_btn_prev.png

milk_btn_next.png

お問い合わせ

LinkIconinfo@gaipromotion.co.jp

〒154-0004
東京都世田谷区太子堂
3-14-8
太子堂COMPLEX 2F
TEL/FAX 03.5787.6511